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しまなみ海道へ(1日目)

市内にて

 

2015年10月11日(日)午前2時45分頃。
三角公園の前で待ってます。」
一泊二日の今回のサイクリングを企画したK氏からのLINEメッセージだった。集合時間は午前3時。すでに目が覚めビブタイツとレッグウォーマー、パールイズミの冬用インナーにウィンドブレーカーを着ていた私は、すぐに近くの三角公園へとロードバイクと向かう。
リビングの灯りと物音で起こしてしまったカミさんに見送ってもらう。「安全に旅を楽しまないと」と、気持ちを引き締める。
三角公園前にK氏の大きなワゴン車が街灯に照らされて停まっている。深夜ということもあり、ノックする音も響くのでは?と、自分でもよく解らない考えが浮かび、いきなりサイドドアを開けてしまう。
当然驚くK氏。すみませんとお詫びし、車内へと乗り込む。
これから、今回の旅の、もう一人のメンバーであるM氏を迎えにいくということで、ワゴンは一路、M氏の待つスーパー駐車場へ。
スーパーへあっという間に到着し、LINEでM氏に連絡。すぐにやって来た。
「おはようございます!」

と、久しぶりに会うM氏に、深夜だということを忘れ、大きな声で挨拶。M氏のロードバイクの車載し、近くのコンビニで朝食を購入する。コーヒーを飲まないと落ち着かない私は、Sサイズのコーヒーを買う。車内で一口、ズズズっと啜る。しかし、最近のコンビニのコーヒーは味が良く、某カフェの500円コーヒーなど買う気になれない。そう思う。
K氏の運転で、ワゴンは旅の目的地である尾道へ向かう。ここからおよそ3時間半くらい。ネットマップで調べた予想時間だ。
深夜〜早朝ということで、道は空いている。0時頃から目が覚めて寝ていないというK氏が、結局ノンストップで運転。“しまなみ”という言葉にテンションも上がり、あまり苦に感じなかったのだろうか?
 
尾道市到着
 
申し訳なく思いつつも、尾道市営駐車場へ到着。時刻は6時半。普段なら眠っている時間なのだが、そんな時間にいそいそとサイクリングの準備を始めている自分が可笑しくなる。
駐車場周辺は駅も近く、ホテルも多い。前泊していたサイクリストや、私たちと同じくらいの、もしくはもっと早い時間に来ていたサイクリストたちが、すでにそれぞれの愛車に跨り、フェリー乗り場へ向かったり、近くのコンビニで補給するなど、これから始まるサイクリングへ着々と準備を進めていた。
心なしか、どのサイクリストも浮き足立っているように感じる。自分の心理状態が、そのように見せていたからかもしれない。
それぞれ準備を終え、思い思いに写真を撮り、コンビニでトイレを済ます。
「あれ?」
ここで初めてワイヤーロックとボトルを忘れているのに気がついた。幸いワイヤーロックはM氏が持ってきていたので、以降もまとめて駐車するということで解決。
「まぁ、ボトルくらいどこかで買えるでしょう。しまなみなんですから!」
二人の言葉に納得した私は、おもむろにペットボトルをケージに差し込む。なんだったらもう、これでいいと思えてしまうから、旅は不思議だ。
フェリー乗り場へ向かうと、何人かのサイクリストと、これから私たちが向かう、向島の住民らしき方がフェリーを待っていた。

程なくフェリーが到着。ほんの目の前にある島に向かうだけなので、乗っている時間は5分か10分ほど。しかし、その数分で、これから走るしまなみ海道への期待が高まっていく。
天候はやや曇り。

向島上陸
 
フェリーから降り、しまなみ海道サイクリングが始まる。
初めの島は走り出しは思いの外、町だった。普通の町並みの中を走ること数分、島に囲まれた海が見えてくる。海は身近にあるとはいえ、こういった景観は目にしたことがなく、非常に新鮮だった。朝日に向かって軽いアップダウンの道を走る。
そして眼前に見えてきたのは因島大橋
どんどんと近づく橋。そして、初めて目の当たりにする大きな道路橋に目を奪われる。と、同時に、上らないとという思いが頭をかすめる。上りは苦手だ。
橋をくぐり、少し走ると橋への案内が見える。基本的にしまなみ海道は道にブルーラインが引いてあるため、尾道⇄今治間に迷うことなく行くことができる。サイクリストにとっては道を逸れても、ブルーラインさえ探せば正規のルートに戻ることができる。これは非常にありがたい。
そして個人的に有難かったのが、橋までの上りは傾斜が緩やかであること。初心者サイクリストはもちろん、女性や子どもでも上りやすく設計されているのである。サイクリストに優しい道。
 
ふと気がつく。
この時まで自分が高所恐怖症であることを忘れていたのだ。
 
因島大橋は自動車道と自転車歩行者道とが上下に分かれている。さらに、歩行者専用と原付自転車専用とに分けられていることで、安心して通行することができる。

欄干があるため、橋の周りの景色はあまり見えないのだが、K氏も恐怖症のようでお互いに怖々走る。と、同時にこれから残り5つもの橋を渡らないといけないという不安に駆られるのだった。

因島上陸
 
基本的にノープランな一行は、ブルーラインに沿いながら走る。少しルートを外し、因島水軍城へ…と、そこそこの傾斜が目の前に現れる。「せっかくだから…」と上ってみたはいいが、自転車で走れる道に限界があり、更に上に見える天守閣。シクロクロスのように担いでいくわけにもいかず、引き返すことにした。
ブルーラインに戻る途中、大山神社を発見。瀬戸内では最も大きい建築の神様を祀っている神社ということらしい。実はこの神社、自転車の神様も祀られていることでも有名で、サイクリストならば立ち寄って損はないスポットである。

実は、大山神社に参拝することと、自転車用の御守りをいただくことが、私的で最も大きな旅の目的だった。御守りはヘルメット裏側に貼りつける物と、ハンドル等に付ける円形の物とがあった。一行は円形の物を購入。私は当然のように赤を選択した。
ちょうど神社は地元の方々が忙しそうに、でも、どこか生き生きとした表情で来週の準備で忙しそうだった。
「すみませんねぇ!ちょうど祭りの準備でばたついてましてねぇ。でも、ゆっくりしていってくださいね。」
と、神社の関係者でない地元の方が気さくに声をかけ、気遣ってくださる。市内ならピチピチのジャージにレーシングパンツを履いて、コンビニにでも立ち寄ろうものなら好奇の目に晒される。私自身も指をさされた経験がある。そんなこともあり、サイクリストに優しいのは、道路だけでなく人もなのだと感じることができた。
 
「いんおこ食べたいね。」
せっかく来たのなら、地元の名物のB級グルメも堪能したいと思うのは常である。時計を確認すると、まだ9時台。とりあえず復路で食べることにし、ブルーラインに戻る一行。目指すは生口島生口橋の眼前にあるカフェ「菜のはな」に差し掛かった頃、アイウェアとヘルメットにポツ…ポツ…と当たるものが。雨である。

いつの間にか空を覆いつくすほどの雨雲が目の前に広がっている。
“これはマズい…。”
雨雲のほか、冷たい風も吹き始めている。明らかに本降りになる気配だ。充電機器や着替えが入っているバッグが濡れてはたまらない。レインカバーを被せ、雨に備える。
予想していたより早く、生口橋を渡ると同時に雨脚が強まり、生口島に上陸した頃には土砂降りとなった。
 
ざーーーーーーーっ!!!
「うわぁー!!」
どうしていいか分からず、一人パニックに陥る。
容赦なく全身に叩きつける雨。
M氏を先頭にトレインを組み、ブルーラインを進むが、前方が確認しにくい状況に危険を感じる。他のサイクリストが雨宿りをしているのをちらほらと見かけ、たまらずトレインも…と、ある会社の屋根を借りることにした。
 
ざーーーーーーーっ!
 
雨が止む気配はない。
「これ見てよ。」
M氏のスマホで雨雲レーダーを確認すると、しまなみ海道をすっぽりと赤いマークが覆っている。
「しばらく止みそうにないですね…。」
濡れた体に風が吹き、どんどん奪われる体温。
「止み間を見て行くしかなさそうですね。」
K氏は行く気だ。雨天ライドはシューズの中が洪水のようになり、歩くと“グジュ”っと、嫌な音を立てるし、なるべく避けたいところではある。しかし、どう考えても止む気配はないし、そもそもすでにシューズはおろか、全身ずぶ濡れの“グジュ”の状態。決心する他なさそうである。
マップアプリで次の目的地である「ドルチェ」を検索する。現在地からおよそ10分もかからないところにあるようだ。
というか、寒いと言っているのにジェラートなのか?そんな考えを他所に、少し弱まった瞬間を見計らって、トレイン再出発。轍の水たまりにタイヤを取られないように、且つ、後車に水をかけないように気をつけないといけない。
 
少し走ると、心なしか体に当たる雨粒の量が減ってきているように感じ始めた。そして、右手に海が見え始めた頃には小雨に変わった。
水たまりを避け、ゆっくり走ると、左手前方にドルチェの看板を発見。雨も止んだ。
「なんだったんだ?いまの雨は?!」
そう言わざるを得ない状況。

ドルチェへ入店し、少しでも暖をとりたいを思ったのだが開店まで15分少々。店舗横のお土産店でトイレ休憩。あとはドルチェのドア前で、ひたすら待つことにした。
全身びしょ濡れだが、お店の人に怒られないだろうか?…と考えていると開店。他にお客もいたが、当然一番乗りである。目に飛び込んでくるのは、ケースに入ったズラリと並ぶジェラート。この中からチョイスしたのは“瀬戸内レモン”と“伯方の塩”のダブル。
コーヒーも注文したが開店直後ということで数分待つことになった。
寒いのに…と思いながら、塩を一口。
「うまっ!」
塩がバニラの甘さを引き立たせ、口に美味さが広がっていく。瀬戸内レモンはシャーベットになっており、口当たりはスッキリとしているのだが、とにかく冷たい。塩バニラは脂肪分があるためか、口に含んだ瞬間、シャーベットに比べると温かく感じた。
M氏、相当寒かったのか唇の色が“プール後の小学生”そのものに。肩も心なしか震えている。体が冷えているせいか温めに感じたホットコーヒーをいただき、店を後にする。次はぜひとも暖かい時にお邪魔してみたいものだ。
進行方向の空を見上げてみると晴れ間が覗いている。相変わらずシューズの中はグジュっと嫌な音を立ててはいるが、まだ続く旅路を明るく照らしてくれるのでは?という期待が膨らむ。
 
途中、ビーチが見えたので寄ってみる。たくさんのレンタサイクルが準備してある中、ひときわ目立つのがタンデム自転車だった。これで海道を…と想像してみたが、走れるのは島内のみとのこと。アップダウンのある道をタンデム自転車だと事故の危険性が高いのだろうと納得する。乗るのは次の機会だろうか。

そして目の前に見えてきたのは、生口島大三島を結ぶ多々羅大橋。これが圧巻。斜張橋として世界第5位の、その大きさと長さもさることながら、その造形美に見とれるばかり。
「おーい、つまんでいかんかぁ!?」
橋への上り口でレモン漬けを配る地元のおばさまに呼び止められる。それでは…と一枚失礼する。瞬間、口いっぱいに広がるレモンの香りと酸味。ここまで走ってきた疲れが吹き飛ぶような味だ。
「美味い!」
そう言って、もう一枚失礼する。その間にもサイクリストたちへ声をかけ、レモンを配るおばさま。失礼な言い方をするようだが、「地元にお金を落としてくれる人たちだから…」という気持ちもあるかもしれない。しかし、その気持ちだけではこんなことはできないと思う。サイクリストたち、中には外国人の方もいらっしゃったが、一生懸命にコミュニケーションをとろうとするその姿に笑みがこぼれる。
礼を告げ、多々羅大橋へ向けてみかん畑の中をワインディングしながら上る。途中、展望台があり、パノラマに大橋を見られるのだが、その造形美からだろうか、足を止めて写真を撮るサイクリストが多い。かくいう私たちも何枚か撮影。撮影していただいた写真も含め、その全ては残念ながら逆光だったが、橋の美しさとサイクリストたちの笑顔はしっかりと目に焼き付いたのだった。

多々羅大橋を怖々渡り、大三島上陸である。

大三島上陸
 
多々羅大橋を渡りきったそのすぐ先に、サイクリストの聖地である多々羅しまなみ公園がある。ここでは軽食の他、しっかりとした海鮮も食べることができる。
公園に向かって左方向には、“サイクリストの聖地”と書かれた石碑と、奇妙な恰好をした人型のバイクラックがある。
石碑横には海と渡ってきた多々羅大橋が広がる。素晴らしいフォトスポットだ。

そして、人型バイクラック。どうしたら自転車をかけることができるだろうか?と考えを巡らせたり、仲間とああでもない、こうでもないと言いながら楽しむのも一興。各々、ラックを換えながら撮影に勤しむ。

一行はブルーラインに沿って次の島、伯方島を目指す。

 
伯方島上陸
 
大三島橋を渡る頃には高さに慣れ、少し余裕が出てきた。しかし、真性の恐怖症であるK氏は、橋の上を20km/h以上で走行することは難しいようだった。
 
雨は止んだが風は強い。またいつ雨が…と不安になる。
しばらく走ると右手に道の駅が見えてきた。
「ここ、伯方の塩ソフトがありますよ。」
と、ここでもトレインを引っ張っていたM氏に呼び掛ける。
”伯方S.Cパークマリンオアシスはかた”に立ち寄り本日3本目のアイスを食する。塩によって引き立てられた絶妙なバニラの甘さが口の中に広がっていく。コーンもワッフルコーンで私好み。

風によってすぐに溶け出すソフトを慌てて食べ、次の目的地を相談。
「次はがっつりとした物が食べたいなぁ…。」
誰かが何気に口にする。それもそのはずである。まともに食事していない状態で50kmほどを走り、さらに時間は正午を過ぎている。
「“さんわ”っていうラーメン屋さんが評判良いらしい。」
K氏の発案で一路“さんわ”を目指すことにした。
 
ブルーラインを少し外れた所に、そのラーメン屋はあった。すごい行列である。整理券をいただいて順番を待つが、小一時間はかかるという。
「せっかくだけぇぐるっと回ってみようか?」
M氏の提案には、腹が減っていた二人も賛同。じっとして待っているよりは、せっかく来たしまなみを走りたいと思う。
細い路地を抜けると、眼前に広がる海と大きな漁船、そして造船所らしき工場が見える。造船所はしまなみ海道の至る所で見ることができる。ゴウン…ゴウン…と、音を立てて稼働する重機を見ると、興味はなくとも心躍らされるものだ。
 
文字どおりグルっと回り、15分ほど待つと順番がきた。
注文したのは塩ラーメンとたこ飯のセット。ラーメンの中でも塩が好物の自分にはたまらない。

ズズッとスープを啜ると、地元で飲む塩ラーメンのそれとはコクが違うことに驚く。そして体に染み渡る温かいスープ。気がつけばあっという間に平らげていた。ご飯には小さいタコが申し訳程度に入っているだけだったので、ラーメン単品にし、大盛りにすればよかったと少し後悔する。
お腹も満たされ外に出ると、雨を降らせた雲はどこに行ったのか?というくらい青々とした空が広がっていた。しばらくウォーマーをつけて走っていたが、少し上ると暑いくらいだ。

そして、最後の島である大島へ向かう。
 
大島上陸
 
伯方・大島大橋を渡り、大島へ。
道中、何度もアップダウンを繰り返したことから、 他の島と比べ、アップダウンが多いと感じられた。途中、小学校低学年くらいの男の子がダンシングで坂をグイグイと上る姿を見つける。
「一人なの?」
「ううん、お父さんいるけど遅いんだもん。」
見るとお父さんらしき方の姿は確認できない。どうやらはるか後方へ置き去りにしたらしい。末恐ろしいクライマーである。
 
途中、トイレ休憩も兼ねて“よしうみバラ公園”へ向かい、めずらしいバラ味のソフトクリームを食べる。予想以上に“バラ”である。話のネタにはなるだろうが…私は母親のつけていた香水を思い出してしまった。

その後、個人的に行きたかった亀老山へ二人を誘う。バラ公園から5,6kmほど南下したところにある山なのだが、観光サイトなどを見てみると、ここからの眺望が絶景なのだとか。標高は300mほどで、“これくらいなら上れるだろう”と、たかをくくっていたのだが、大間違いだった。
案内を見つけ左折。しばらく緩斜面を上った後、亀老山への看板が出てくるのでそちらに向かう。そこから道幅が狭くなり、勾配もグッと上がる。10%越えは当たり前。標高300mをこの勾配で上るのだから、すぐに終わるはずと思うのだが、つづら折れが何度も目の前に現れ心が折れそうになる。後半に差し掛かったあたりだろうか、M氏が後方よりスルッと抜け出し、それまで先頭を走っていた私をあっという間に置き去りにする。
コーナーを曲がってもM氏の背中が見えなくなった頃、眼前に広がる景色。しまなみに点在する島々が迎えてくれる。

「…すごい。」
息も絶え絶えに思わず呟く。
傾きかけた日は、海を白く照らす。その光景は来る人の目を奪うことは間違いないだろう。途中の展望台らしきところでM氏が停車。私もそれに倣い停車する。自転車を降り、改めて眺望を目にしてみる。
…言葉にならない。
道から少し出たところに展望台が2カ所作られているのだが、高いところが苦手な私も、思わずその展望台に足を踏み入れずにはいられなかった。

視界を遮るものはなにもなく、目の前には海と島、それを繋ぐ橋だけ。辛かったが上ってよかった。
 
景色に目を奪われているとK氏が、もう少し上の展望公園までスルスルと上っていく。それを追うM氏。私はすでに足がないため、マイペースにゆっくりと上り、展望公園駐車場へ到着。
ここには更に上にある展望台があるのだが、せっかくなので自転車を担いで上ってみようということに。高いところはこりごりなK氏は休憩。M氏と一緒に展望台へ行く。
さすがに自転車を担いで、展望台まで階段を上ってくる人はいないのでは…と思っていたが、canyonに乗られた見た目が60代くらいの先客があった。少し話をし、M氏と写真を撮っていただく。
少し先に、また違う角度から展望できる場所もあったのだが、通路が狭いことや観光客が多いこともあったため、引き返すことに。
ここから亀老山を下るのだが、10%越えの区間が多い上に狭く、対向車の量も多いこの道。昨年末に地元の下りで落車している私にとってダウンヒルは恐怖を伴う。さらに、先ほどまできれいに見えていた景観が、高さを明瞭にし、恐怖を煽ってくる。カーブもそこそこ厳しいため、崖に向かって走っているような気分になる。さらに、私が履かせていたホイールはカーボンクリンチャー。ブレーキ性能はアルミリムのそれより劣る。
とにかく怖い。

 
M氏はあっという間に背中が見えなくなる。特殊な構造のリムでブレーキ性能が高いこともあるだろうが、とにかく速い。私はK氏の背中を追うように恐る恐る下るが、その背中もどんどんと遠くなっていく。そんな私を見かねたように、途中で待っていてくれたK氏。心強い。
上る時の方が時間が短いように感じるほど下りの時間は長く、それでもようやく終わりを告げた。
ブルーラインを辿り、やはりアップダウンのある道を走る。しばらくの後、緩やかな坂を下ると、蜜柑のようなオレンジ色の夕日が一行を照らしてくる。その景色に吸い込まれるように“よしうみいきいき館”へ。

目の前には海に今治市と大島を繋ぐ来島海峡大橋。いよいよ1日目の旅も終わりを告げようとしている。

いきいき館を少し行った先に大橋への道がある。緩やかな坂を上り、いよいよ最後の橋に差し掛かると高さや風の強さ、そして橋の長さを実感。さらに路面が濡れていてスリップの危険性も高い。高さには、ある程度慣れてきたとはいえ、落車=怪我ではすまないという考えが頭をかすめる。私より恐怖心の強いK氏は、橋の手前でストップ。さすがにこれだけの悪条件が揃っては、先に進むのも躊躇われる。
しかし、橋の上でじっとしているのは逆に恐怖が強くなることに気がつき、なんとかペダルを回し、M氏の後を追うことにした。K氏がゆっくりでも追いかけて来られるくらいの速度で。

思った以上に風が強い。向かい風だけでなく、海からの横風もあるため油断できない。ホイールが横風を受けると簡単にハンドルを取られてしまう。ハンドルへ荷重気味に、スリップに注意しながら塔を避けて作られたコーナーを曲がる。曲がった先には向かい風とともに横風が吹くため、恐怖と寒さで体が強張っていく。
 
…あと何回こんな思いをしないといけないのか?終点はまだか?
 
頭に浮かぶのはそんな言葉ばかり。もはや景色を楽しむ余裕はない。主塔を何回過ぎたら…と、それを目印にしてペダルを回し続ける。
目の前に橋の終わりが見えてきた時には本当に安堵した。開放感にも似た気持ちを感じながら、ループしている道を下る。もう怖さはない。
地面に足をつけた時の安心感たるや、言葉では言い表せないほどだ。
「あー!地面最高!!」
数分遅れて到着したK氏は、特にそれを感じていたようだった。
 
 
時刻は午後5時過ぎ。
辺りも薄暗くなってきた。
急いで今日の宿である“今治プラザホテル”へと急ぐ。

程なくホテルに到着。チェックインを済ませ、バイクを部屋へ持ち込ませていただく。すぐにお湯を張り、ジャージを脱ぐ。バイクを見ると泥と砂だらけに。事故なく、ここまで連れてきたバイクに感謝である。大山神社でいただいたお守りも功を奏したのかもしれない。
湯に浸かると、
「あぁー…。」
思わず唸る。100kmほどのライドだったが、寒さと緊張により強張った筋肉が、ゆっくりとほぐれていくのを感じる。
夕飯は外食を予定。6時半にロビー集合だったが、洗濯が終わらず、2人を待たせてしまう結果になってしまった。
美味い料理と酒、自然と自転車以外の話でも盛り上がる。少々ペース配分を間違え、1軒目で潰れてしまいそうになったが、なんとか復活。
ホテルへ戻ればあとは眠るだけ。

明日も早い。
 
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